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202112/10

【体験レポート&独占インタビュー】「演劇×ゲーム×謎解き」という新しい体験型演劇 “イマーシブミステリー『アウフヘーベンの牢獄』”

先日先行取材した体験型演劇「イマーシブミステリー『アウフヘーベンの牢獄』」は、12月4日(土)と12月11日(土)にライブ配信されますが、その前に行われた公開ゲネ体験会にAkiba.TVスタッフも参加させていただきました。数々のゲームデザインや舞台などを手がけるイシイジロウさん、超人気謎解きゲーム制作団体「よだかのレコード」、演劇や映画を手掛けてきた老舗企業の松竹がコラボレーションした話題作で、新開発の手法による全く新しい体験型エンターテイメントとのことで、わくわくしながら臨みました。

主演は、第26回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストとして注目され、2.5次元ミュージカルなどで躍進を続ける北川尚弥さん。案内人を声優・エッセイストで日本SF作家クラブ会長の池澤春菜さんがつとめます。脚本・演出は、多岐にわたるジャンルの作品でヒット作を連発してきた劇作家・舞台演出家の岡本貴也さんがタッグを組む新しい試みです。ZoomとLINEのオープンチャットを使い、観客が演者とリアルタイムに対話しながら謎を解き物語を進めていきます。

公開ゲネ体験会ですが、冒頭に指定されるLINEのオープンチャットに参加し、ZOOMの画面を見守ります。すでにオープンチャットでは始まる前からたくさんのトークが盛り上がっており、開演前の劇場のようだと感じました。そしてついに開演!池澤春菜さんによるご案内にドキドキしていると、画面には麗しい北川尚弥さんが何やら困っている様子が映し出されます。壁には謎の文字やヒントらしきものもあり、「何が起きているのだろう?」と物語の世界に引き込まれます。そしてオープンチャットにいる私たちに、北川さんは問いかけます。大勢で相談したり、会話しながら、物語は進んでいきます。北川尚弥さんの迫真の演技に、「助けたい!!」と謎解きにも熱がこもります。その謎解きが私には難しいのですが、オープンチャットでのトークを見て、ヒントを得たり、反応しあったり、会ったことのない人たち同志なのに、「なんとか助けてあげたい!」と謎を解きたい気持ちを共有しあい、不思議と一体感が生まれます。謎を解いていくごとに、北川さんに強く感謝されるうれしさもありました。

ひとつの謎が解けて安堵すると、また、新たな困難が待ち受けていて…。北川尚弥さんの焦る表情、困った顔、さまざまにうろたえる様子がたまりません。さまざまな感情を見せてくれるシーンがたくさんあるので、演劇ファンも満足です。今までのドラマや映画のように一方的に見ているだけではなく、自分の問いに答えてくれる仲間がいて、物語が謎の解き方次第で変わっていき、謎解きの世界をオンラインでリアルタイムに浸れる、新しいエンターテイメントのカタチを実感しました。

なお公開ゲネ体験会後の興奮冷めやらぬ中、「イマーシブミステリー『アウフヘーベンの牢獄』」の案内人をつとめた池澤春菜さんにインタビューできました!

インタビューに答えてくださった池澤春菜さんのコメント

――想像をはるかに超える新しいエンターテイメントを感じました。

池澤春菜さん(以下、池澤さん) 謎解きははまりますよ。とくにこの新しい謎解きには。ZOOMで制限される条件だからこそ、自分ができることは何だろうと考えるし、謎の仕組みがまたすごいです。“イマーシブ”とは“没入”という意味で、自分自身が世界に入り込んで、その世界の登場人物になって楽しめるわけです。今までの劇場に行くのとは、また別の楽しみがあります。個人的には、すごいゴージャスなジャングルクルーズだと感じています。世界中の人たちともできますし、可能性がありますよね。

――演者さんと作り上げる感じが新しいですね。公開ゲネプロを終えられて率直な感想をお聞かせください。

池澤さん テストプレイやリハーサルもしてきたのですが、実際にお客様といっしょにやると違いますね。謎解きが大好きな私が謎解きを解く側にまわれなくて、みんなが楽しんでいるのを見守っているのはとてももどかしく、ちょっとさみしい気もしますが。でも、演じながらも参加したくなるおもしろさがありました。

――案内人役であっても、どういう風に物語が進むかわからないワクワクやドキドキがありますよね。

池澤さん 自分自身が謎解きが好きなあまり、裏読みをしてしまうことがあるのですが、案内人役になってみて、お客様には仕掛けを気にすることなく純粋にこの物語を楽しんでもらいたいと思いました。

――みなさん、謎解きに真剣に挑んできますよね。顏もわからない人同士なのに、チームになって謎解きしていく一体感がでてくるのがおもしろかったです。この公演で感じた可能性を教えてください。

池澤さん 今回、リピートでも楽しめる仕掛けになっています。まさに進化していく演劇ですね。たとえば「(オンラインということで)距離が離れているからこそつくれるトリック」など、もっといろいろな設定を仕掛けられるのではと思いました。私が会長をしている日本SF作家クラブの作家にも、監修に入ってもらったんですよ。もっとSF寄りにして、地球を離れていく宇宙船と地球にいる私たちとの対話とかもおもしろいかもしれない。「ウラシマ効果で時間の進み方がちょっとずれていく」など、ZOOMのようなオンラインツールだからこそできる仕掛けが、まだまだいっぱいありそうです。

――普通に小説や舞台を見ているだけではできないことが、リアルに感じられるっていうのはすごいですね。

池澤さん 自分がその世界にインタラクティブに働きかけることによって、自分自身の物語になるのがおもしろいですよね。あるひとつの仕掛けで、自分が知っている日常の中に「その人が存在しているんだ、同じ世界なんだ」という驚きを、地続きでリアリティをもって感じられたり。普通の舞台ではできないことがこのイマーシブミステリーならできますね。

――すでにいくつか池澤さんの頭の中に構想がありそうですね。

池澤さん いろいろとやってみたいことはありますね。物語をつくる作家だけでなく、映像や音楽、演出、役者と、それぞれの分野のスペシャリストが集まって、この一つの瞬間をつくっています。ですので外からより魅力的なお話と魅力的な謎を組み合わせられるといいなと思っています。今回のチームはものすごく力があるので、もっとすごいことができそうです。公開ゲネプロでは(テストプレイまでなかった)音や仕掛けがめちゃくちゃかっこよく仕上がっていますし、テストプレイから公開ゲネプロ、そして本番へと、ひたすらに進化しています。

――今回、案内人として心がけた点はありますか?

池澤さん 不思議な立ち位置ですので「このお芝居にどうやって関わっているのか」ミステリアスなキャラクターをつくっています。主人公とは住んでいる世界や見ているものがちがうかもしれません。この公演は、プレイした人とおしゃべりしたくなったり、自分たちのもっている体験を話したくなりますよね。「あの謎、難しかったよね」とか。「あそこにヒントがあったんだよ」と話し合えるのもおもしろいですよね。「一回目と二回目ではお話が違うの?」とか、続きが気になるかと。案内人がいると、共有したい気持ちも引き出しやすくなるかもしれません。

――今回のようなSFやゲームなどとの融合といった「新しい物語や表現」は、今後どうなっていくと思いますか。

池澤さん メタバースと組みあわせたりするのも、おもしろいと思います。最近、それぞれがキャラクターとなってプレイする宇宙空間のオンラインゲーム、「Among Us(アマング・アス)」が話題になりましたよね。ああいった遊び方をさらに発展させられるかもしれない。今回の物語は、それぞれの現実の接点とお互いの経験を、ZOOMという2次元の画面で共有しているけれど、メタバースで接点が平面から立体になれば、より鮮烈で豊かな奥深いことができるのではないかと思います。例えば、実際にホテルに泊れるイマーシブシアターがあったんです。それを仮想空間でやってみる。ホテルのお部屋のあちこちでいろんな芝居が繰り広げられ、いったいこの人はお客さんなのか演者なのか、アバターなのか、現身なのか、それすらわからない。「現実とメタバースのどっちを信じたらいいんだろう?」ということもできそうです。

【公式サイト】
演劇×ゲーム×謎解きで楽しむオンライン配信の体験型演劇
「イマーシブミステリー『アウフヘーベンの牢獄』」
https://yodaka.info/event/2112aufheben
※チケットは公式サイトよりご購入いただけます。


企画・製作:「イマーシブミステリー『アウフヘーベンの牢獄』」製作委員会

原作・総合監修:イシイジロウ
ゲーム制作:よだかのレコード(㈱stamps)

演出:岡本貴也
脚本:岡本貴也、イシイジロウ

配信・テクニカルプランニング:ノーミーツテック テクニカルディレクター 藤原遼

クトゥルフ監修:林譲治
宣伝美術・衣装協力:変身写真館 ミニーナ

演劇制作:松竹㈱


 

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