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20258/10

【観劇レポート】声優が紡ぐ“声だけの歌舞伎”――「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎〜梅と松と桜〜篇」(三越劇場/2025年8月9日〜11日)

古典歌舞伎の名作を人気声優が現代語で朗読し、その物語の魅力をダイレクトに届けるシリーズ「こえかぶ」。第四弾となる今回は、歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑』を、三つ子の兄弟・梅王丸、松王丸、桜丸を軸に再構成した「梅と松と桜」篇です。
会場は格式ある三越劇場。朗読劇ならではの集中力と物語世界への没入、歌舞伎特有の情熱が交錯する時間が始まりました。

豪華声優陣が3人で24役を演じ分ける妙技

今回も人気・実力ともにトップクラスの声優陣が勢ぞろいし、日替わりで出演する3名が20役以上もの人物を瞬時に切り替えて演じます。その初日を務めたのは、野島健児さん(梅王丸ほか)、浪川大輔さん(松王丸ほか)、仲村宗悟さん(桜丸ほか)。

梅王丸の真っすぐな正義感、松王丸の冷静さと苦悩、桜丸の純粋さと悲劇性――それぞれの人物像が声の表現だけで鮮やかに立ち上がります。加えて、女性役や悪役など、まったく異なる役柄への切り替えはまさに瞬間芸。その完成度の高さに、「声優」という職業のプロフェッショナルさと表現の幅広さにあらためて感嘆させられます。

歌舞伎の名場面を朗読劇で

兄弟が敵味方に分かれる「車引」、桜丸の最期を描く「賀の祝」、我が子を犠牲にする松王丸の決断が胸を打つ「寺子屋」といった名場面を通じて、親子の別れ、主従の別れ、兄弟の別れという普遍的な悲哀が描かれます。朗読であることを忘れるほど、物語の熱量が客席に届きます。
効果音には歌舞伎特有の柝(き)やツケの音も交え、目を閉じれば舞台の情景が浮かぶようでした。脚本・演出を手がけた岡本貴也さんの、古典の物語を現代の感覚でわかりやすく再構成する巧みな解釈と、観客を惹き込む世界観づくりも冴えわたっています。長年にわたり面白く完成度の高い作品を世に送り出してきた実力が、今回も存分に発揮されています。

観劇して感じたこと

今回の『菅原伝授手習鑑』は歌舞伎三大名作のひとつで、人間関係の入り組みやドラマ性が巧みに構築された物語。その複雑なおもしろさを、こえかぶ版では現代語でわかりやすく解きほぐしつつ、“声だけ”でダイレクトに観客の心に届けます。台詞の裏に潜む複雑な感情や、時代背景に根ざした価値観が、声優陣の巧みな演じ分けによって鮮やかに浮かび上がり、物語の奥行きがいっそう際立つのです。

また、こだわり抜かれた舞台美術と演出も強く印象に残りました。中央に据えられた演台の背後には、梅、松、桜の意匠があしらわれたパネルがあり、バックライトで役柄やシーンの転換ごとに赤、緑、ピンク、青と照明が変化していき、場面の理解を深める一面もありました。

会場には声優ファンが多く訪れていましたが、中には声優も歌舞伎も好きで連日観劇予定という人もいました。

歌舞伎座公演との“二重体験”&アンバサダーの発信

今回の演目『菅原伝授手習鑑』は、9月に歌舞伎座で全段通し上演が予定されています。まず「こえかぶ」で物語の背景や人物関係をつかみ、その後に歌舞伎座で舞台版を観れば、より深く作品世界に浸れるはずです。歌舞伎座を先に観てから朗読劇を味わうのも一興――ですが、「こえかぶ」は配信がないため、公演後にもう一度観られる機会があるといいですね。過去にBS衛星劇場で放送もあったので、ぜひ今後も配信化や放送を期待したいところです。歌舞伎のイヤホンガイドよりわかりやすくおもしろい!とまで思ってしまいました。

アンバサダーを務めるのは、歌舞伎俳優・中村米吉さん。米吉さんは『ファイナルファンタジーX』を題材にした新作歌舞伎など、現代的な題材を取り入れた舞台にも出演経験があり、その中で声優による演技にも関心を持つようになりました。実は「こえかぶ」第1弾公演を観劇したのがきっかけで、その表現力と世界観に開眼。周囲のスタッフに魅力を熱心に語るうち、松竹からアンバサダー就任を依頼されたという経緯があります。


米吉さんは「こえかぶ」公式YouTubeチャンネルにも登場し、「菅原伝授手習鑑」の登場人物やあらすじをはじめ、歌舞伎でその役を担うことの重みや魅力をふんだんに語っています。この演目は歌舞伎三大名作のひとつで、人間関係の入り組みやドラマ性が巧み。その複雑なおもしろさをわかりやすく解説しつつ、舞台の裏側や役作りの工夫も、歌舞伎役者ならではの視点で語られており、オンラインでの予習にも最適です。

さらに米吉さんは、各日夜の部のアフタートークにも毎晩登壇。出演声優とともに、役を演じるうえでのコツや表現の工夫など、舞台ではなかなか聞けない裏話が飛び出すはず。どんなトークが繰り広げられるのかも、公演の大きな楽しみのひとつです。

歌舞伎ファンにこそ観てほしい

声優ファンにとっては豪華キャストの共演が最大の魅力ですが、この作品が描くのは、歌舞伎の物語が持つ人間ドラマそのもの。役者の姿や舞台装置がなくても、物語の迫力と情感は損なわれず、むしろ言葉と声の力でより鮮明に迫ってきます。歌舞伎を愛する人ほど、この“声だけの歌舞伎”で物語の本質に触れる体験を味わってほしい公演です。

▶「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎~梅と松と桜~篇」
残すは、 8月10日(日) 、11日(月・祝)!
当日券のご用意もあるそうです。詳細は公式SNSにてご確認ください。
ぜひこの機会をお見逃しなく!
公演公式サイト:https://plan.shochiku.co.jp/koekabu/performance/koekabu3/
公式SNS:https://x.com/koekabu

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