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特別レポート「花が彩る歌舞伎展 ~古典×デジタル~」伝統の世界を最新デジタルARTで体験!
Akiba.TVでは、近年、伝統芸能を代表する歌舞伎がAkiba系コンテンツともコラボして脚光を浴びていることに注目し、初音ミクとコラボした超歌舞伎やスターウォーズ歌舞伎、「鬼滅の刃」×「京都南座 歌舞伎ノ舘」を取材し、記事を書いてきました。
今回、2021年3月9日(火)~3月21日(日)に開催予定されていましたが、緊急事態宣言延期のため中止となってしまった「花が彩る歌舞伎展 ~古典×デジタル~」を特別に内覧させていただきましたので、特別レポートとしてご紹介いたします。
素敵な展示で、一般の来場者へお披露目がかなわなかったのがとても残念に思われ忍びなく、会場をめぐるようにレポートさせていただきます。
場所は千葉県市川市にある芳澤ガーデンギャラリー。敷地は約1000坪あり、四季を彩る木々や草花の庭園「百樹園」に囲まれた閑静なギャラリーです。秋葉原から市川駅はJR総武線で21分。古墳や奈良時代の伝説が言い伝えられ、文化人が多く住み千葉でも有数のお屋敷街で、のどかで散策の楽しいエリアでした。
展示のメインテーマは、歌舞伎の三大名作のひとつであり、超歌舞伎でもおなじみの『義経千本桜』。物語世界の梅や桜で春の訪れを感じつつ、初心者も楽しめるように、古典とデジタルを融合させて新たな歌舞伎の世界へ誘う体験型展示イベントです。実際の舞台で使用している衣裳・鬘・大道具・小道具や押隈など貴重な品々の展示と、最新テクノロジーのデジタルアートによる二部構成になっており、入り口では武器の小道具である桜があしらわれた花やりが出迎えます。ギャラリー内の展示も広いお庭も、梅と桜に囲まれて、公開されていたら、たくさんの人が幸福感につつまれたことでしょう。
◇歌舞伎とは?
今から400年前、京都で出雲阿国(いづものおくに)という女性が「かぶき踊り」を流行させ、遊女を含めた「女歌舞伎」や少年たちの「若衆歌舞伎」に発展しますが、風紀を乱すという理由で幕府に禁止されました。成人男性中心の「野郎歌舞伎」が今日の歌舞伎の基礎になったというルーツを知ることから始まります。
◇『義経千本桜』より、鳥居前の場の展示
『義経千本桜』は、源平合戦で滅亡したはずの平家の武将、平維盛・平知盛・平教経が実は生きていたという設定で、悲劇のヒーロー源義経を中心に展開する五段構成のフィクション物語。二段目の鳥居前の場に登場する義経家来の佐藤忠信(左)と弁慶(右)の衣裳。梅の季節です。今でも人気のフォトスポットである京都伏見稲荷の連なる鳥居の大道具。歌舞伎ならではの鮮やかな色と印象的な造形は、様式美に溢れています。
佐藤忠信が肩に背負っているように見える紫と白のひときわ太い襷(たすき)は、超人的な力を持つ役柄の人物がつけるに仁王襷(におうだすき)といい、5kgを越す重さがあります。
枝は本物の木。ひとつひとつ枝ぶりや舞台の大きさに合わせて、今回も大道具の方が会場にあわせて作ったそうです。近くで大道具や小道具、衣裳のディテールや美しさを見られる貴重な体験でした。
◇『義経千本桜』より、吉野山の場の展示
物語の中での時間の経過とともに、桜の季節へ。吉野山の場面が描かれる四段目は、狐が人間に化けていたことがわかるファンタジー。兄・頼朝に疑われ都を離れることになった恋人の義経を追って、桜満開の吉野山をさまよう愛妾・静。一方、鼓の皮になった親を慕う子狐が、義経家来の忠信に化けて静を警護します。
忠信が義経から拝領した鎧に、静が義経から預かった初音の鼓。忠信と静は、鎧と鼓で義経に見立てて恋い慕う人を偲びます。歌舞伎に登場するお姫様は、赤を基調とした衣裳で「赤姫」と呼ばれ、銀の花櫛のついた「吹輪(ふきわ)」という鬘で華やかな拵え。静御前は、物語のヒロインとして吹輪の鬘で、緋綸子(ひりんず)に縫いの着付けに、共の打掛け姿と華麗な衣裳ですが、姫ではなく白拍子という踊り子の身分なので、「赤姫」が着る大振袖よりも袖の短い中振袖を着用します。帯の長さも姫の拵えよりも短くなっています。
演じる役者さんや型によって、同じ役であっても衣裳の色やかつらの飾りも変わるそうです。花の上に蝶々が飛び、細かいところまでよく見えます。ハートのように見えるあしらいが可愛いです。
展示会に流れている音楽も雰囲気を盛り立てます。
大道具の絵も間近で、花びらの筆使いまで感じることができました。大道具も劇場の大きさやお芝居に合わせて、毎回、新たに作られます。
◇体験型デジタルアート 「カブキノヒカリ」体験コーナー
VRなど最先端のメディアを使ったデジタルアートで、歌舞伎の構成要素である「音」「踊り」「芝居」を統合させ、幻想的な『義経千本桜』の世界を体験できます。
▲光景の奏
ホログラムで立体に浮かび上がる鼓にふれると、ポポポンと鼓の音がして狐、太鼓にふれると忠信に化けた狐が現れます。歌舞伎に使われる様々な音を新しい形で楽しむことができました。何とも不思議な体験!
▲吉野の花道
歩くたびに足元に舞う桜の花びら。吉野山に広がる桜をイメージして華やかな道中を表現しているそうです。子どもも喜びそうな仕掛けです。
▲「不可視演舞(ふかしえんぶ)」伏見稲荷の鳥居前の場をARで体験!
灯篭を近づけると、義経との別れを惜しむ静と忠信が現れ、物語が始まります。舞台を見ているような臨場感ある影の世界を楽しみます。灯篭の近づき方で影の強さや大きさがも変わります。
歌舞伎を見たことのない大人も子どもも楽しめて、歌舞伎を鑑賞しなくても、歌舞伎の物語世界に参加できる新しい体験は、劇場を訪れる一つのきっかけとして裾野を広げていきそうですね。これらのデジタルアートは、条件が合えば他の会場でも展示できるそうです。秋葉原でもお目見えできるといいですね。
◇小道具の違いと押隈の展示
莨入れ(たばこいれ)の見比べ。お芝居の役柄にあった意匠でそれぞれ違います。
『義経千本桜』より、渡海屋銀平実は新中納言知盛の小道具。衣裳にあわせて白や銀ばかり。
歌舞伎の化粧には、役や身分などを示す役割があり、何種類もの型があります。中でも隈取(くまどり)は、顔に筆で線を引き指でぼかす独特の化粧法で、血管や筋を誇張して表現しています。隈取の色には意味があり、赤い紅隈は若さや正義、青い藍隈は悪人や怨霊、茶色い茶隈は精霊・妖怪と、役柄を視覚的に表します。
この隈取を布や紙に押し当てて写し取ったものを押隈(おしぐま)といい、出演直後しか取ることができず舞台の記憶も刻まれるため、とても貴重です。
▼青い藍隈は悪人や怨霊を表す
▼赤い紅隈は若さや正義
▼「書抜(かきぬき)」
かつて、歌舞伎の世界では大元の台本は一座の機密として作者の手元にしかありませんでした。
俳優には演じる役のセリフだけを抜き書きした「書抜」のみが渡されました。
◇「とある楽屋の風景」再現展示
通常、訪ねることが難しい役者さんの楽屋ですが、こちらで追体験できました。公演の様子がわかるように、実際の楽屋でもスピーカーからお芝居の音やお客様の賑わいが流れます。臨場感たっぷりで舞台の準備をする緊張感が伝わってきます。
続いて大物浦の場で用いられる碇綱と大碇の大道具。そばで見ると舞台で見るより、さらに大迫力です。義経に復讐しようとしましたが再び敗れ、知盛の壮絶な最期を描く通称「碇知盛」と呼ばれる名場面です。
◇イベントアンバサダーの歌舞伎俳優・市川笑三郎さんによる、
特別映像「女方ができるまで」
歌舞伎では、役者さん自身が化粧をします。舞台上でもくずれない工夫などを織り交ぜながら、素早く無駄のない、お化粧の流れや拵えを拝見できました。
歌舞伎に詳しい人も初めての人も楽しめる、見所の多い展示でした。大道具、小道具、衣裳から先人の知恵と創意工夫を感じて、とても勉強になりました。またどこかの会場で見られる機会が参りますように。
なお、Akiba.TVのYouTube番組でも「花が彩る歌舞伎展 ~古典×デジタル~」の取材模様を紹介しましたので、ぜひご覧ください。
開催概要:【中止】花が彩る歌舞伎展 ~古典×デジタル~
開催日 | 【中止】2021年3月9日( 火) 〜2021年3月21日( 日)
休館日 3月15日(月) |
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時 間 | 9:30~16:30 (入館は16:00まで) |
会 場 | 芳澤ガーデンギャラリー |
料 金 | 一般500円 |
割 引 | 65歳以上400円、高大生250円、中学生以下無料 ※障がい者手帳をお持ちのとその付添いの方(1名)は無料 ※会期中に限り、東山魁夷記念館との利用者相互割引を実施 ※エコボ満点カード1枚で、1人、1回入館できます。 |
主催お問合せ | 【主催】市川市歌舞伎展示イベント実行委員会・市川市 【製作】松竹株式会社 (お問合わせ)市川市 文化スポーツ部 文化芸術課 TEL 047-712-8557 |
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